気仙沼線・大船渡線の柳津~気仙沼~盛間は2011年3月に起きた東日本大震災により甚大な被害を受け、その後気仙沼線は2012年8月、大船渡線は2013年3月にバス高速輸送システム(BRT)により仮復旧しました。しかし、鉄道での復旧は残念ながら叶わず、このままBRTでの運行が続けられることになりました。今回は両線の歴史を振り返りつつ現状のまとめを行いました。
大船渡線の歴史
大船渡線の歴史は古く、1925年に一ノ関駅~摺沢駅間が開業、その後も区間開業が続き、1935年に最後の大船渡駅~盛駅間が開業し全線開通しています。
その後、キハ110の投入が比較的早期に導入され、ワンマン運転の開始や、一時期は快速「南三陸」が盛駅まで乗り入れたりするなどの動きが有りましたが大きな動きはありませんでした。
しかし、東日本大震災により全線が不通になってしまいます。一ノ関~気仙沼間は鉄道により復旧され、2012年末には「POKÉMON with YOUトレイン」による臨時快速「ポケモントレイン気仙沼号」を運転開始しました。
気仙沼~盛間は橋脚や駅舎の流出など被害が大きく、JR東日本は鉄道による復旧を断念。沿線自治体の合意を取り付けたうえで2013年3月2日にBRTによる運行を開始しています。また、2015年には快速列車が廃止され全列車が普通列車の運行になっています。
リアスシーライナー
1997年から2010年の夏期には臨時快速列車「リアスシーライナー」が仙台~八戸間を東北本線、石巻線、気仙沼線、大船渡線、南リアス線、山田線、北リアス線、八戸線を経由して運行していました。
所要時間はなんと驚愕の約10時間。乗りとおすには相当の忍耐が必要だったと思われます…。充当車両も2000年以降は原則としてリクライニングシート装備の車両が充当されていました。
車内販売は基本的に北リアス線内(一時期は南リアス線内でも)で行われ、盛駅停車中には三陸鉄道社員による物販販売が行われていました。
気仙沼線は紆余曲折を経ての全線開通
気仙沼線の建設構想自体は1896年からありました。この年の6月に明治三陸地震が起こり、大津波によって死者が2万人以上に達するなど三陸地方沿岸は大きく被災し、災害復旧の一環としてこの地域に鉄道を敷設する構想が立ち上がりましたが、頓挫してしまいます。
その後1933年には昭和三陸地震が発生し三陸地方沿岸はまたも大津波に襲われ、さらに日中戦争・太平洋戦争の開戦で気仙沼線の工事は凍結されるなど時代の流れに大いに翻弄されます。終戦後、 既成線の復旧が概ね完了した1952年に工事が再開され、1957年にようやく気仙沼~本吉間が開通しました。その後も工事が進められ、1968年10月に前谷地~柳津間が開通します。
しかし、この年に国鉄諮問委員会は国鉄の赤字線83線約2500キロメートルを廃止する計画案を提出し、気仙沼線が即時廃止路線に含まれていたことから沿線の自治体や住人に衝撃を与えました。そんな中でも柳津~本吉間は小刻みながら工事が続けられ、1977年12月に全線開通。この路線が国鉄が開業した最後の地方交通線となりました。
気仙沼 – 本吉間の区間運転列車を含めて、上り6本・下り7本の普通列車が設定されました。この内、上りの1本が石巻行き、上下1往復が仙台直通で設定されましたが、 気仙沼線の利用者は少なくなく、中でも仙台直通列車は後に1両増結の措置が取られるほど混雑していました。 仙台直通列車はJR化後に快速「南三陸」として2往復に増発され、指定席も連結されています。
しかし、2011年の東日本大震災では関係ない第3者だったため、私は作り物の特撮映像ではない本物の大津波がテレビ越しではありますが見れて大興奮しました。ただ、実際に大津波の実物を見た方は結構怖かったでしょうね…
この津波で陸前戸倉駅、志津川駅、歌津駅、陸前港駅、陸前小泉駅、小金沢駅、最知駅、松岩駅、南気仙沼駅が流失、津谷川橋が落橋、各所で路盤・築堤が流失(消失)するなど、沿岸部を通る陸前戸倉~南気仙沼間は壊滅状態となてしまいます。
前谷地~柳津間は4月末に復旧しましたが、残る区間の復旧は自治体の復興計画において路線区間の変更を行う必要があるため年単位になることをJR東日本は明らかにしました。その後、JR東日本は不通区間の鉄路復旧について莫大な修復費用が掛かることや今後の利用者数が減少することを理由として鉄道での復旧を断念しました。
その後、2012年5月に沿線自治体とBRT方式での仮復旧に合意し、同年8月20日よりバス代行運転扱いで暫定的な運行を開始しました。BRT用の車両はJR東日本が用意し、当初はミヤコーバスに運行を委託していましたが 同年12月よりJR東日本がバス事業者となりBRTの本格運行を開始しています。 BRT区間には運行状況が確認できるロケーションシステムが導入されたほか、既存駅舎の改良やBRT用の駅舎の整備、交通規制標識や信号の設置、需要に応じた新駅の設置などが専用道の延伸に合わせて順次行われています。
快速「南三陸」
仙台と気仙沼地域を直通する唯一の定期列車で、午前と午後に合わせて2往復(1 – 4号)設定されていました。1・4号は平日は全車自由席であり、1・4号の土曜・休日と2・3号には指定席車が連結されていました。このほか、お盆や年末年始には1往復の臨時列車が設定されていました。なお、所要時間は2時間程度でした。
一時期2・3号は盛駅まで乗り入れていましたが、2001年11月に盛への乗り入れは取りやめて、以降は2往復とも仙台~気仙沼間の運行となっています。
使用車両はキハ110、指定席車両はリクライニングシート装備となっていました。2007年まではキハ28・58で運用されており、鉄道ファンからは大きな注目を集めていました。
東日本大震災の発生以降「南三陸」の運行は取りやめられていましたが、2012年1月に 仙台 – 石巻間(東北本線・石巻線経由)のノンストップ快速列車が運行開始します。が、需要がそこまで伸びなかったのか、現在は運行を取りやめています。 何とか需要がある年末年始や夏休み・お盆の期間だけでも運行再開してくれないでしょうか…
鉄道事業廃止でどうなる?
2019年11月の鉄道事業廃止届提出により何か変わるわけではないと思います。実際、BRT は道路運送法に基づき運行しており、鉄道事業の廃止による運行・サービス水準の変更はない、と明言しています。
ただし、今のBRTは鉄道区間の代行輸送の側面もあるため「青春18きっぷ」・「秋の乗り放題パス」で乗車できましたが、これは今後どうなるのか。正式にバス路線として運用されるのであれば 「青春18きっぷ」・「秋の乗り放題パス」での乗車は不可という扱いになる可能性も否定できません。
BRTの現状
両線のBRTですが、どちらの路線も1時間1本程度+区間便という感じで鉄道時代からは大幅に利便性が向上しています。また、駅の新設が鉄道時代と比べて容易に行えることから多くの駅が新設されており、来春も両線で計5駅を新設します。
2013年にはBRT区間にBRT専用ICカード乗車券「odeca」を導入、2015年には「Suica」の使用も可能になるなどキャッシュレス決済も行えるようになっています。