現在、中央線特急から撤退したE257系が長野総合車両センターと秋田総合車両センターで順次東海道線特急「踊り子」転用への改造工事を受けています。これに伴い、185系は2021年春で引退することが決定しました。 今回は185系が登場した経緯や運用の変遷、今後の予定をまとめました。
登場の経緯
185系が登場したのは、当時急行「伊豆」や一部の普通列車で運行されていた153系が製造から20年近くが経過し、塩害などによる経年劣化が深刻な状況に陥っていたためです。
当初、185系は153系の代替として考えられていたため、急行「伊豆」の運用だけではなく普通列車としての運用も考慮したため、2ドアの転換クロスシート車両仕様が提案されました。しかし、このスタイルはすでに117系であったため、急行料金をとることを考慮し(後に特急に格上げ)デッキの設置が行われました。なお、客室扉やドアの大きさが大きめに取られています。
こうして紆余曲折を経つつ、 185系は国鉄では初めての試みとなる「特急用と通勤用に供用可能」な新型車両として基本編成を10両編成、付属編成を5両編成として製造されることになります。 1981年に153系の置き換えを開始し、翌年には耐寒耐雪装備や碓氷峠越えの対策が施された車両が200番台として区分され、7両編成の車両が高崎線に投入、165系を置き換えています。
東海道線では「踊り子」などで活躍
1981年3月より田町電車区へ配置が開始され、153系と混用される形で急行「伊豆」と普通列車への充当が開始されました。また、同年7月までに0番台の115両が出揃ったため、同年10月1日からL特急「踊り子」7往復と、朝夕の普通列車10往復で運用が開始されました。
しかし、急行から特急に格上げされたにも関わらず転換クロスシートのままだったので、特急の利用客からは苦情も出ていました。また、最混雑時間帯を外しているとはいえ、混雑時間帯の普通列車の運用は遅延を招いていました。
1985年に「新幹線リレー」の運用を離脱した200番台が転用され「踊り子」で運用されていた183系を置き換えると、翌年11月のダイヤ改正では着席通勤を目的とした列車として「湘南ライナー」の運行が開始され、こちらにも田町電車区の185系が運用されるようになりました。一方、朝夕の普通列車運用は「湘南ライナー」の運行が開始されたことで減少し、夕方の普通列車運用は消滅しています。なお、 1991年3月のダイヤ改正では、東海道線の小田原と熱海の間の区間普通列車に田町電車区の185系付属編成が運用されるようになりましたが、1993年12月のダイヤ改正でこの運用は消滅しています。「湘南新宿ライナー」への充当も行われましたが、普通列車への充当は縮小が続き、2013年春のダイヤ改正で熱海~伊東1本のみに縮小されると翌年にはそれもなくなってしまいました。
また、2013年冬より、183系が受け持っていた「ムーンライトながら」などの臨時列車の運用の置き換えが行われ、現在まで185系で運用が行われています。
高崎線では「あかぎ」等で活躍
高崎線方面では200番台の7両編成が新前橋電車区に配置され、1982年3月に急行「あかぎ」で運用を開始、増備とともに急行「ゆけむり」・「草津」・「軽井沢」や普通列車でも運用されるようになります。
また、1982年6月に開業した東北新幹線の上野~大宮間の連絡列車として設定された「新幹線リレー」にも運用され、同年11月の上越新幹線開業から新幹線リレー号は28往復に増発、同時に特急「谷川」・「白根」(現在の「草津」)・「あかぎ」や一部の普通列車にも運用されるようになりました。特に普通列車の運用では高崎から軽井沢までの普通列車に充当され、碓氷峠越えを果たしています。
1985年3月に東北・上越新幹線が上野まで延伸開業して「新幹線リレー号」は廃止されますが、 「新幹線リレー号」に使用されていた185系は上野発着の急行の特急格上げに使用され、この時に東北本線系統でも特急「なすの」の運行が開始されました。また、この時に余剰となった200番台4本は「踊り子」へ転用されています。また、1987年秋から、新前橋電車区の185系を使用して前橋から伊豆急下田まで直通する特急「モントレー踊り子」が土休日に運行開始されるようになり、この間合いで東京と伊東を結ぶ「踊り子」91号・92号にも運用されています。( 「モントレー踊り子」 は1990年冬をもって廃止)
しかし、特急「なすの」は乗車率が芳しくなかったのか、1988年3月のダイヤ改正で4往復が廃止となり、同時期に 長野から東京への日帰り滞在時間を延ばすために新設された上越新幹線と連絡して高崎と長野を結ぶ快速列車「信州リレー号」に充当されるようになります。 1990年3月のダイヤ改正で 「なすの」は1往復を残して快速へ格下げされ、7両編成2本が「踊り子」へ転用されています。また、 1991年夏に運行された上越新幹線と連絡して運行する臨時普通列車「軽井沢リレー」の2号・3号に新前橋電車区の185系が運用され、注目を集めました。
1992年3月のダイヤ改正では通勤需要にこたえる目的で「なすの」が上り1本増発され、同時に「ホームライナー古河」にも充当されるようになります。
1993年の夏からは、高崎地区から日本海側へ向かう海水浴利用者のために運行された臨時快速「青海川」の1・2号に、新前橋電車区の185系が運用されるようになっています。 同年12月のダイヤ改正から新宿発着の「ホームタウン高崎」「あかぎ」が設定されていますが、こちらは田町電車区の185系が充当されています。また、 「シュプール上越号」2号・3号と 「シュプール草津・万座」への充当が開始されました。 1994年12月のダイヤ改正では乗車率の芳しくなかった 「信州リレー号」が廃止されています。
なお、長野新幹線の開業に伴い1997年9月末で信越本線の横川と軽井沢の区間は廃止となりますが、廃止直前まで高崎と軽井沢を結ぶ普通列車として185系が運用され、185系は定期普通列車では最後に碓氷峠を越えた形式となっています。その名残で高崎~横川間で185系の運用が残り続けましたが、普通列車としての運用は次第に減少し、2004年10月のダイヤ改正で高崎線で上り1本だけ残っていた普通列車運用から外れ、2006年3月のダイヤ改正に伴い普通列車としての運用は消滅しました。
リニューアル工事施工
1995年9月から1998年11月にかけて、新前橋電車区の200番台に対してリニューアル工事が施工されました。内容は以下の通りです。
- 普通車の座席を回転式リクライニングシートに変更
- 化粧板の交換
- 客室ドアをフットマット式からセンサー式へ交換
- 外装の変更
なお、1998年に田町電車区のグリーン車についてはバケットタイプの座席に交換され、翌年から2002年にかけて田町電車区所属の185系についても同様のリニューアル工事が施工されています。
中央線の臨時「かいじ」などでも運用
中央線最初の運用は 1990年の1月から2月にかけて運行された臨時特急「かいじ」191号・192号です。この年の春に設定された臨時快速列車「ホリデーむさしの」 にも充当されました。 臨時快速列車「ホリデーむさしの」は、この年の秋以降は富士急行線の河口湖まで運行区間が延長されると同時に167系に置き換えられ、その後しばらく中央線での運用はありませんでした。
1992年のGWに 八王子・新宿と成田空港を結ぶ臨時特急「ウイング」が運行され、この年の秋には新宿と日光を結ぶ特急「日光」にも充当されています。また、翌年1月からは「シュプール白馬号」のうち3号・4号にも充当されましたが、これが185系初の夜行列車となっています。
1995年10月から11月の土休日では初めて「ホリデー特急」が運行され、 大船と奥多摩を結ぶ「ホリデー特急おくたま号」、逗子と奥多摩を結ぶ「ホリデー特急かまくら号」、鎌倉と高尾を結ぶ「ホリデー特急たかお」の3列車が設定され、いずれも185系付属編成(5両)が充当されました。
翌年から横浜から横浜線経由で中央線と直通する臨時特急「はまかいじ」が設定され、185系7両編成で運行されています。なお、横浜戦に導入されていたATCに対応するため、「はまかいじ」に 充当される編成の先頭車にはATC装置の取り付ける改造が行われています。
651系の転用で暗転
185系は特急「なすの」の廃止や「水上」の臨時化などがありましたが、183系が受け持っていた臨時列車・団体列車を受け持つようになり、一部の余剰車両については廃車になりましたが、「ムーンライトながら」への充当など明るい話題もあり、このまま安泰なものと思われました。しかし、常磐線に新型車両E657系が投入され、651系が転用されると185系の行く先に暗い影を落とし始めます。
2014年3月のダイヤ改正で交流設備を停止しリニューアル改造が行われた651系1000番台が 「草津」の全列車に充当され、「あかぎ」も新宿発着の1往復を残して置き換えられてしまいました。(平日については新しい着席サービスを導入した「スワロー」化)これを受け、遂に編成単位での廃車が開始されました。
2016年春のダイヤ改正により、高崎線の特急列車から185系の運用がついに消滅し、651系1000番台に統一されました。定期運転としては東海道線の特急踊り子、湘南ライナー、ホームライナー小田原のみの運用となります。
しかし、高崎線での運用が完全に消滅したわけではなく、臨時列車などでの運用はまだまだ健在です。また、最近では上越新幹線でのトラブルの影響で東京~高崎間で臨時快速が運行されています。そちらの模様は「上越新幹線停電で185系臨時運行」をご覧ください。
E257系の転用で命運尽きる
踊り子系統については成田エクスプレスに充当されているE259系の一部編成が余剰となったことに伴い、これで置き換えが行われることが検討されましたが、 臨時列車の「マリンエクスプレス踊り子」への導入にとどまり、この時は安泰であるかに思えましたが、中央線の特急に新型車両E353系が導入されることになり、E257系の転用が決定。ついに185系が引退することが決まりました。
また、251系についてもすでに新型車両E261系への置き換えが決まっており、こちらは来春での引退が濃厚です。こちらについては「サフィール踊り子投入で伊豆特急はどうなる?」をご覧ください。
185系が受け持っていた臨時運用はどうなる?
今後の臨時運用については、一部のE257系0番台と余剰が発生している500番台が中心となって運用されていくものと思われます。また、ムーンライトながらの後継車両については「ムーンライトながらの後継車両はどうなる?」をご覧ください。
まとめ
いかがでしたか?まずは2021年春で運用を終える185系にはお疲れさまといいたいですね。今後、伊豆方面の輸送を担うE257系とE261系が末永く活躍することを願っています。185系の撮影・乗車はお早めに。