JR北海道で運用されていたキハ40系の老朽化が深刻になってきたこともあり、JR北海道ではキハ40系列の置き換えが長年検討されてきました。そして今回、ついに新型電気式気動車、H100形気動車の量産車が登場し、来春ダイヤ改正で函館山線の運行を開始することが発表されました。H100形気動車の概要や今後のキハ40置き換え計画についてまとめました。
投入の経緯
JR北海道では、札幌圏の輸送に特化したキハ201系4編成12両を投入したのを最後に、普通列車用の気動車の新製は行われてきませんでした。
しかし、キハ40系列の老朽化が深刻化してきたことに加え、2014年にJR北海道は各種の不祥事( 「スーパーおおぞら14号」の脱線火災事故 、2013年8月・9月に発生した2か月連続での保線ミスによる走行中の貨物列車脱線など)を受け国土交通大臣から「輸送の安全に関する事業改善命令及び事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を受けてしまいます。
これを受け、翌年3月に策定・公表した「安全投資と修繕に関する5年間の計画」では2017年度の普通列車用の気動車量産先行車2両の製作が明記されました。 その後、6月には同時期に制作されることとなったJR東日本の電気式気動車(→GV-E400系)と仕様を同一とすることが発表され、2017年7月に形式名と詳細な仕様が発表されています。
H100形気動車の概要
H100形気動車は基本的にJR東日本のGV-E400系と概ね同一仕様で設計されていますが、過酷な北海道を走行する関係上一部の仕様が異なっています。
- 付随台車にディスクブレーキが装備されている
- 暖房機能がGV-E400系と比較すると強化されている。(屋根上の集中形空調装置の暖房機能が16KW、 室内電気暖房機は24.85kWの容量を持つ )
- 冬季にディスクブレーキとブレーキパッドが凍結することにより生じるブレーキ不緩解の防止のため、車両が停止し、ブレーキが「B7」段に投入されている条件で、運転台のスイッチを扱うと、従台車のブレーキ圧力を開放する機能が装備されている
- 各軸毎の滑走再粘着制御を行い、エゾシカなどの動物との接触回避のため急ブレーキを扱った際の踏面損傷を防止
- GV-E400系と異なり、当形式は両運転台車のみが製造される
- 制輪子に合金鋳鉄制輪子を用いている
- 吊り手の高さが一部異なる。また、車内にゴミ箱が設置されている。
配置と今後の運用は?
まず、2020年1月までに15両が納車される予定となっており、2020年の春のダイヤ改正で函館山線においてキハ201系で運行される一部の列車を除く全列車と札幌発然別行の列車1本に充当されることになっています。
また、2020~2021年までに60両の投入が計画されています。最終的には2022年までに量産車を127両を投入する計画となっており、キハ40系列の全車両を置き換える予定です。
函館山線の次に投入される線区は?
函館山線の次に投入される線区はどの区間かを?というのを考えていきたいと思います。現在のJR北海道が保有するキハ40系の所属は以下の通りです。
- 旭川運転所…32両
- 釧路運輸車両所…29両
- 苫小牧運転所…26両
- 苗穂運転所…19両(ただし、300・330番台の6両は定期運用を持たない)
- 函館運輸所…15両
このうち苗穂運転所の19両については来春のダイヤ改正で函館山線の運用分は置き換えられることと、来年5月で札沼線の非電化区間が廃止となることから、全車が用途廃止となることが濃厚です。
ただ、この後の置き換えに関してはH100形気動車の直接投入で置き換える可能性と既存車両をH100形気動車に置き換えて玉突きで置き換えに回る可能性と両方考えられます。JR北海道で保有する既存の普通列車用気動車とは併結不能なのも考慮しなければなりません。
これに加え、日高線や留萌本線の廃線が濃厚な為、この点も考慮する必要があります。また、北海道新幹線の札幌開業時に函館~長万部~小樽に関しては経営分離されることが決まっていますが、長万部~倶知安間に関しては廃線になる可能性もあり、ここも難しいところです。話が長くなりそうなので、この件に関しては後日別記事でアップしたいと思います。
9/18追記:「H100形気動車、今後の投入線区は?」にまとめました。
まとめ
今回ついにJR北海道で新型気動車が投入されることで、キハ40系列はここ数年間で一気に姿が見れなくなることが想像できます。キハ40系列の記録・乗車は早めに行っておいた方がよいでしょう。