阪神電鉄の「ジェットカー」5500系のうち一部が武庫川線へ転用され、昨日より運行を開始しました。これにより、武庫川線で運用されていた「赤胴車」7861・7961形と7890・7990形が置き換えられひっそり運用を終了したので、今回はこの一件を取り上げたいと思います。
5500系の概要
5500系は1995年に登場した新型の「ジェットカー」です。VVVFインバータ制御、ボルスタレス台車などの新機軸が採用されたのが大きな特徴で、2000年までに4両編成9本が製造されています。
大きな特徴はやはり驚異的な加減速力でしょう。起動加速度4.0km/h/s、減速度4.5km/h/sとなっており、従来のジェットカーよりは加減速度は遅くなったものの、VVVFインバータ制御の採用で乗り心地も滑らかになっています。また、中高速域の加速性能の向上によって従来通りのダイヤでの運行を可能にしています。なお、高加減速性能と粘着性確保のため、従来のジェットカーと同じ全車電動車の編成となっています。
車内案内表示装置については電光式路線図とスクロール式の表示器が設置されていましたが、現在はスクロール式の表示器のみの設置となっています。座席については、短時間の乗車が多いことからオールロングシートとなっています。
後にマイナーチェンジ車の5550系が4両1本のみ製造されています。5500系との主な差異は以下の通りです。
- 種別表示器にフルカラーLED、行先表示器に白色LEDを採用
- 客用扉の幅は5500系の1400mmから1300mmに変更
- 屋根板と客用扉の戸袋部下部の外板はステンレス鋼を採用
- 開閉扉上部には扉開閉予告灯と盲導鈴を新設
- 車内案内表示装置はLED式のものを採用
- 1000系との機器共通化により主電動機の出力が向上したことで、全車電動車編成ではなく3M1Tの編成となっている
- 主電動機にIGBT-VVVFインバータを採用
- シングルアームパンタグラフを採用
- 運転台の主幹制御器にデッドマン装置を設置、運転台パネルにモニタ装置の情報表示器が設置されている
登場後はほかの普通列車用編成と共通運用が組まれています。
リニューアル工事を実施、武庫川線にも投入
なお、2016年から順次リニューアル工事を施工しています。
- 旅客設備は5700系に準じたものに
- 半自動ドア化 (車内外自動放送機能付き)
- 車内にLCDディスプレイ設置
- 車体のカラーリングを変更。上部が「ラピスブルー」、扉と下部が「モダングレー」としている
また、武庫川線で運用している「赤胴車」が老朽化してきたことから、5500系のうち2本を2両編成4本として転用することとしました。改造内容は以下の通りです。
- 中間車の先頭車化
- ワンマン運転機器の設置
- 各出入口に半自動ドアスイッチが追加
- パンタグラフのシングルアーム化
- 車外スピーカーの新設
- 行先表示器のフルカラーLED化
- 車内のリニューアル施工、車外のカラーリング変更
運転開始日が伏せられたままでしたが、昨日からひっそりと運用を開始しています。
車内にはバッターボックスを模したシールが貼られていたり、阪神タイガースを意識したものとなっていますね。
「赤胴車」がひっそりと引退
なお、5500系ワンマン化改造車が武庫川線で運用を開始したことにより、長年武庫川線を走ってきた「赤胴車」に関しては6/2を以て運用を終了しました。
7890形または7990形のうち1両はUR都市機構に譲渡され、来春を目処に西宮市の武庫川団地内に設置し、地域住民のコミュニティースペースとして活用される予定です。
今後も車両のサイレント引退が続くか?
告知なしで車両が運行終了するのは今回が初めてではありません。
ここ最近は車両が告知なしで引退することが目立っていますが、こうせざるを得なかったのは撮り鉄・葬式鉄対策の可能性が高いでしょう。
これからも車両の引退時には特に告知なしでというケースが増えていくと思います。特別な車両ならともかくとして、通勤車両の引退としては、ひっそりと引退をする方がバカ騒ぎも起きず平和でいいと思いますね。