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 本日未明に起きた千曲川の堤防決壊の影響で、北陸新幹線の車両基地である 「長野新幹線車両センター」 に停泊していたE7系8本とW7系2本が水没するという大きな影響が出ています。これによる今後の車両繰りについて考察を行いました。

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長野新幹線車両センターが水没

長野市の新幹線車両センターが水没 JR東日本(19/10/13)

 JR東日本によりますと、台風による大雨で千曲川の氾濫したことで、長野市赤沼にあるJR東日本の長野新幹線車両センターで新幹線の車両が水につかる被害が出ています。全車両の3分の1が被害にあったことになります。専門家は「最悪、廃車になるかもしれない」と話しています。

(中略)

 北陸新幹線はJR東日本が所有するE7系とJR西日本が所有するW7系の合わせて30編成ありますが、今回の浸水でE7系の8編成とW7系の2編成が被害を受けていて、北陸新幹線の全車両の3分の1が被害にあったことになります。

 このためJR東日本などは、現時点での運転再開のめどは全くたっていないとしていて、仮に運転が再開されても運行本数が減る可能性があるということです。

 車両基地はJR長野駅から北東に10キロ余りの場所にあり、今回氾濫した千曲川が東に流れています。

 多くの北陸新幹線の車両が浸水被害を受けたことについて、鉄道のシステムに詳しい工学院大学の高木亮教授は「新幹線がここまで大規模に水没した事例は今回が初めてではないか」と述べました。

 そのうえで「車両が汚れた水につかってしまうと乾いたとしてもそのまま運転すると火が出る可能性があり、完全にきれいにする必要がある。しかし、電子機器などを隅々まで完全にきれいにするのは現実的には難しく、映像を見たかぎりでは、少なくとも床下にある機器類はすべて交換する必要があるのではないか」と指摘しています。

 さらに「床上にある空調の配線なども痛んでいた場合は最悪、廃車という事になるかもしれない。ただ、新幹線の車両120両をこれからすぐに製造するというのは難しく、仮に廃車となった場合の影響は利用者にとっても会社にとっても甚大だ」と話しています。

 JR西日本の平成27年3月期の有価証券報告書によりますと、北陸新幹線120両を製造する費用として、328億1100万円が記載されています。これを単純計算し、1編成あたりの費用を試算してみると、1編成12両を製造するのにおよそ32億8000万円かかることになります。

 長野県のハザードマップでは、今回、被害を受けた長野市赤沼の「長野新幹線車両センター」の付近は、付近の千曲川などが氾濫した際には、10メートル以上、浸水するおそれがあるとされていました。

引用: 北陸新幹線 車両浸水 全体の3分の1 専門家「最悪 廃車か」

 今回の一件について思ったのですが、まずハザードマップで大きな被害を受けるかもしれないような場所に車両基地を設けるのはいったいどうなのか?という気がしなくもないですね。ただ、設置されたのは1996年とのことですから、今のような酷い水害はあまり想定されていなかったのかもしれません。

 ただ、川が氾濫するかもしれないというのにそのまま車両を放置して水没させてしまったのは大きな判断ミスと言えるのではないでしょうか。北陸新幹線は計画運休ですでに止まっていたのですから、本線上の他の駅への退避は十分に可能だったと考えます。実際、伊勢湾台風の時には0系を本線上に退避させているわけですし、今回それを行わなかったのは筆者としては疑問です。

 今回の水害で被害を受けた車両については恐らく廃車にはせず、修理を行うことになると考えます。ただし、床下の機器類が水没していることもあり、他の車両センターで修理を行うことは不可能です。長野新幹線車両センターを復旧してから、これらの編成の修理を行うことになるでしょう。ただ、機器類は発注してもすぐに届くわけではないですので、影響は長期間に及ぶことが予想されます。

https://twitter.com/tbbt_kippu_ya/status/1183260969906003969

車両運用はどうなる?

E7系
引用:E7系

 現在、JR東日本が保有するE7系は現時点で23本、JR西日本が保有するW7系は11本となっています。このうちE7系8本とW7系2本が被災したので、現時点で動かせるE7系は15本、W7系は9本ということになります。

 こちらで公開されている運用表をみてみましたが、定期運用に関しては朝方の「はくたか596号」をあさま606号の前運用としてつなぎ、西日本の車両については夜に金沢を出区するW771・W781運用をほかの運用と統合すれば3運用が削減できますから、北陸新幹線の定期運用に関してはJR東日本が13本、JR西日本は7本でOKということになります。予備車が両社とも2本ずつとなるので何とかなりそうです。

 ただし、これだと上越新幹線「とき」・「たにがわ」の運用分までは回らないことになりますので、そちらに関しては当面の間E2系またはE4系で代走することになるでしょう。(グランクラスがありませんが、シートサービスのみですので、利用者は多くはないと考えられ、こちらの影響は軽微と考えます。)

 しかし、長野で当面の間検査・整備ができないことを考えるとJR西日本の白山 総合車両所での検査・整備ということになりますが、さすがにJR東日本の全編成を 白山総合車両所での検査・整備とするのは現実的ではないでしょう。そうなると1往復のみ 検査・整備 のために「とき」で新潟へ帰る運用が組まれると考えられます。

 追記:長野駅での折り返しがほとんど組めないことを考えると、北陸新幹線のダイヤは早朝・深夜を除き「かがやき」と「はくたか」のみの設定とした特別ダイヤで対応すると思われます。→長野~上越妙高の不通は長期化の模様。両社から臨時ダイヤが発表されました。(詳しくは「北陸新幹線の暫定ダイヤ発表、一部区間不通長期化か?」をご覧ください。)

臨時列車の運転はどうする?

 こちらに関しては、現在の運用の合間に追加して、場合によっては「つるぎ」の一部列車を運休して運転することが考えられますが、現行のダイヤではどうがんばっても数往復しか割り込ませる余地がなく、ほとんどの臨時列車は運休させるほかないのではないか?と考えます。

 秋季はもう仕方ないとしても、冬季は年末年始で利用客が増えることが大いに予想されますので、それまでに何とか数本復旧させたいと考えているはずです。あるいはF24編成とF25編成の投入を早めるのでしょうか。どちらにしても臨時列車の設定は例年よりも少なくなるでしょうから、指定席の争奪戦は厳しいものとなりそうです。

E4系
引用:E4系

 あとはE4系の一部編成が軽井沢 (P51・52 )・長野 (P81・82、軽井沢駅~ 佐久平駅間の電源周波数切り替え装置(60Hz対応)を搭載) への入線に対応していますが、重量の関係から旅客を載せての碓氷峠越えは不可能だったのか、下り列車での「Maxあさま」の運用は設定されていません。従って上りのみの設定ということになりますが、果たして回送列車を設定してまで「Maxあさま」が設定されるのか。E4系の引退は間近と言われているだけに、設定されたら注目を浴びることとなりそうです。

まとめ

 まさか新幹線があのように洪水の中にいるような光景を目にすることになるとは思いませんでした。一刻も早い復旧を願っております。

 ただ、これだけの本数のE7系・W7系がいっぺんに被災したことで、E4系「Maxあさま」が再び設定される目が出てきました。これに関しては千曲川の堤防決壊に感謝したいところですねw