東急電鉄が2019年度の設備投資計画を発表したので、項目順に見ていきたい(一部考察も含む)と思います。
車両の新造
2018年度、田園都市線に従来よりも定員が増えた新型車両「2020系」を6編成導入し、現在9編成を運行していますが、2019年度も6編成を導入し8500系の置き換えを進めます。
また、目黒線にも新型車両「3020系」を3編成導入します。こちらに関しては「東急目黒線に新型車両導入&8両化へ」をご覧ください。
ホームドア設置完了
ホーム上の安全対策として、2014年度から東横線・田園都市線・大井町線の全64駅でホームドア整備を進めてきましたが、今年度に残りの19駅に設置することで整備完了となり、整備済みの目黒線・池上線・東急多摩川線を含めて、 世田谷線とこどもの国線を除く東急線全駅に、ホームドアもしくはセンサー付き固定式ホーム柵が設置されます。ホームからの転落事故や列車との接触事故を防止し、ホームにおける転落事故ゼロを目指します。今年度のホームドア整備計画は以下の通りです。
- 6月末までに運用を開始する駅:東白楽駅・二子新地駅・鷺沼駅(2・3番線)藤が丘駅・田奈駅・大岡山駅
- 9月末までに運用を開始する駅:宮崎台駅・青葉台駅・つくし野駅・南町田駅
- 2020年3月末までに運用を開始する駅 多摩川駅・白楽駅・鷺沼駅(1・4番線)・すずかけ台駅・中央林間駅・下神明駅・戸越公園駅・ 旗の台駅(5・6番線)・北千束駅・等々力駅
Qシート連結列車拡大へ
現在、6020系による大井町線の夕ラッシュ時の下り急行列車5本で有料座席指定サービス「Qシート」が行われていますが、6000系のQシート車両も先日登場しました。詳しくは「大井町線Qシートの現状と今後」をご覧ください。
田園都市線等の更なる混雑緩和・遅延減少へ
田園都市線等のさらなる混雑緩和と遅延の減少に向けて、設備面・ソフト面と車両面の3方面で対策が続けられています。
設備面
設備故障に起因する遅延を防止するため、田園都市線の地下区間を中心に設備の健全性向上を進めています。昨年度は田園都市線の地下区間を中心にバネバランサー(電車線は温度により伸縮するため、張力を一定に保つための調整装置)や排煙・消防設備の更新、重要設備の点検方法・頻度の見直しを行い、運行に支障をおよぼす建築・電気設備などの故障は8件から2件に減少しました。
今年度も更なる設備健全化に向けて、き電線絶縁化対策や電車線更新といった設備更新を進めるほか、バネバランサーは田園都市線地下区間における更新が完了する予定です。 また、 昨年度に東横線で設備の状態を常時監視して予防保全を行う手法(CBM)に基づく線路状態のモニタリングシステムを導入しましたが、今年度は田園都市線をはじめとした他路線への展開および、AIやIoTなどの先端技術も含めた監視・分析データ活用方法の検討を進めます。
ソフト面
「グッチョイクーポン」、「バスも!キャンペーン」、「会員制サテライトオフィス『New Work』」など、田園都市線を中心に、「移動手段」・「乗車時間」・「働く場所」の3つの選択肢を広げる施策を引き続き実施し、朝のピーク時間帯に集中する混雑の分散化に取り組んでいます。
この他、「東急線アプリ」では、輸送障害発生時などに、列車走行位置や目的地までの最新の所要時分実績がわかる「駅間Time」、駅構内の混雑状況をリアルタイムで配信する「駅視-vision」などの情報提供を行っており、輸送障害発生時に、お客さま自身が行動を選択しやすいよう情報の充実を図っています。
また、新機能としてマイ乗降駅を登録すると天気予報や入場規制の情報がプッシュ通知で知ることができます。田園都市線限定ですが、「マイ乗降駅」に表示されている次の電車の到着時刻をタップすると、到着する電車の車両別混雑度を見ることができます。
更に、 一昨年と昨年の夏には東京都の混雑緩和プロジェクト「時差Biz」にあわせて、 「時差Bizライナー」が走りましたが、今年も設定されるのか、どの車両で運行されるのか注目です。
車両面
田園都市線では昨年より新型車両「2020系」が導入されており、8500形などの置き換えが順次行われています。 「2020系」 の特徴は以下の通りです。
- 動作状態や機器状態を常に監視できる大容量情報管理装置(INTEROS)を採用することにより、設備不具合などを無線通信により把握し、異常時の早期復旧を行います
- ビッグデータのリアルタイム蓄積を活用することで、メンテナンス 性の向上や故障の未然防止に繋げます
- 車内の快適性向上を図るため、背もたれの高いハイバック仕様の座席を採用し、空気清浄機を設置します
- ドア上に配置するデジタルサイネージでは、多言語案内の充実を図るとともに、ニュースや天気予報など充実した情報サービスを提供します
- フルSiC-VVVFを用いた制御装置の採用や、車内の全照明と前照灯・尾灯へのLED灯の採用 により、使用電力を削減します
東横線でデジタルATC導入
当社で初となるデジタルATCの整備を東横線で進め、2022年の供用開始を目指します。デジタルATCは、現行のATC制限速度情報のほか、先行列車からの距離情報を追加することで、きめ細かな列車間隔の制御が可能となり、ラッシュ時間帯の列車運転間隔の短縮などによる遅延回復や定時運行が実現します。
2022年の供用開始までに東横線に乗り入れている各社(西武・東武・東京メトロ・横浜高速鉄道)の車両はデジタルATCへの対応するための工事をする必要があります。また、東京メトロはすでに7000系を置き換えるための新型車両投入を発表しています。詳しくは「有楽町線17000系&半蔵門線18000系導入発表」と「有楽町線17000系&半蔵門線18000系導入続報」をご覧ください。
安心してご利用頂くための取り組み
2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据え、2015年度から、当社保有車両への車内防犯カメラの設置を進めています。2018年度末時点で全156編成中(8500系は除く)57編成に設置済みであり、 東京オリンピック・パラリンピック開催までの全編成への設置が行われる予定です。
また、 2013年度から、踏切全体を広範囲に検知可能な3D障害物検知装置の導入を開始し、2018年度時点で、全135踏切中 (世田谷線、こどもの国線を除く)74カ所に設置済みです。2019年度は18カ所で設置を予定しており、将来的には世田谷線・こどもの国線を除く東急線内の全踏切に設置される見込みです。
駅の快適性向上
- 渋谷駅では、駅周辺の開発に合わせて11月に地下出入口番号を変 更するとともに、案内誘導サインを改善します。
- 南町田駅は今秋の「南町田グランベリーパーク」まちびらきに合わ せ駅舎をリニューアルし、駅名を「南町田グランベリーパーク」駅に改称するほか、平日も急行列車の停車駅となります。
- 田園都市線三軒茶屋駅で、改札階と地上を 結ぶ2つ目のエレベーターの運用開始を今年6月に予定しているほか、桜新町駅のエレベーター増設、江田駅・白楽駅へのエスカレーター設置を進めます。
- 池上線戸越銀座駅に続き、多摩産材を使用した、池上線旗の台駅の「木になるリニューアル」工事が完成します。また、二子新地駅・高津駅のホーム屋根延伸工事も完了します。
- トイレのリニューアル工事を進めており、今年度は横浜駅で運用開始予定、用賀駅・桜新町駅では来年度の完成を目指します。
まとめ
東急電鉄のホームドア設置が世田谷線・こどもの国線を除いて完了するということで、事故と遅延の減少が見込めますね。
東横線へのデジタルATC導入により、相互乗り入れ先の車両も対応を迫られますので、どのような動きをするのか、2022年まで目が離せないでしょう。今後の各社の動きに注目です。